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変わった国の訪問記も.
しばらく前,まだ札幌駅の北口界隈が雑然としていたころ,駅の真北正面150mあたり,ビルだかなんだかの北裏に2階建木造のボロ屋があった.1Fと2Fそれぞれに飲み屋が入っており,そのうち1階にはフツーのオジサンがガヤガヤのむ居酒屋,そのとなりには怪しいドアと“BBQくにむら“の看板.平成の初めに札幌に来た当初から気になる怪しい一角だった.そんな頃,1階の居酒屋に入る機会があって,となりのBBQの様子を外巻きにうかがったことがある.と言っても,窓もなにもなく,ドアの外側をチラ見するだけだったけど(笑).
ちょうどバブル時代で,そこかしこが地上げにあってSIM-Cityのように更地になっていくなか,ほどなくぽつねんとボロ屋が残ってしまって,せっかく路地裏,片隅にあったボロ屋が露呈してしまった.すわ,風前の灯か?!と思い,無くなる前に確かめようと“くにむら”のドアを開けてみた.その先には,ただ廊下が眼前に続いている.ますますイイ感じに怪しい.廊下を進み,突き当たりのドアを押すと,カウンターだけの小さなバーが現れた.電球の黄色い明りで薄暗く,床は木だったろうか.カウンターの奥から一体どんなおそろしい人物が射すくめるような視線を突き刺してくるか?,と思ったら,わりとフツーで(こんな店をやるのであるからそこそこには怪しい),同年代風の男が,クールで,少しシニカルで,いやしかし意外と飾らない親しみやすさも浮かべて佇んでいた.新宿ゴールデン街みたいだぁ,こんな店があったとは,,,,と感銘.何度か足を運ぶこととなった.しかしバブルだの再開発だのは,ついにこの北口文化の最後の砦を飲み込んでしまい, “くにむら”は移転・再出発をはかることとなる.
ところで大むかし(昭和後期)の北口界隈っていうと,タクシー代をケチってススキノから歩いて帰ってきた途中で,ええい朝まで飲んじまえ,とわずかの手持ちでぐだぐだできる店があったり,地元中高校生の親達は,子ども達に“北口界隈には近づいちゃだめよ”とくぎを刺すようなところであった.いま,JRは高架になり,冬に友人Kの車が滑って肝を冷やした陸橋はなくなり,すっかりきれいになってしまった.
で“くにむら”はその後,北12条界隈にて再出発をはたす.移転当初は会員制BARなる旨を掲げていたが,そのワケをきくと,“なんだか面倒くさいから“みたいなことを言っていた.が本心は,客筋が変わって店の雰囲気が変わらないように,当初は昔からの客で営業して,店の空気を再現・再興したい,ってことだろう.しばらくして,会員制の文字が店先から消えていた.店主の目論見はうまくいったようである.以前ほど怪しくなくて,女性でも入れるような店になったが...
いろいろうまくいかないことが重なって,なんとか気持ちとストレスを消散・霧散させたいときに,店の扉をあけることが多い.店主とワインを分け合いながら,とりとめの無い話しをあれこれして,普段の生活の立場や次元とは違ったところに身をおいて,無私というか,日常の自分から離れる機会を得たいのだと思う.旅がよく,自分発見の手段のように訳知り顔で語られるみたいだが,旅はその反対で,徹底的に無私にさらされること,砂粒の一つになれる機会であると思う.海外旅行はその典型かも.そうか,“くにむら”に海外旅行かぁ.
ところで“くにむら“の由来は”らむにく“とのことである.なんで,ラム肉はレギュラーメニューではある.
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