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AudioとFishingと旅,つれづれ
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 知らない街,小路を歩きながら,その日の酒と食事をとる店を物色するとき,一番に気が惹かれるのは,小奇麗,瀟洒,趣味の良さそうな店構え・・・の対極にある,なんだか怪しくて,トンデモ親爺あたりがギョロメで睨みを効かせるような,しかしトンデモにうまかったり,見事だったりするものが出てくる,そんな驚きがありそうな店である。“大狸”は,30年前にはすでにそこにあったように記憶する。24条通りから北に通る細い中通りに面した建物のモルタル壁に狭い入口が付いていて,店だとわかるのは,大きくて昔は赤かったかもしれない提灯に,これまた大きな字で大狸とあるから。で,換気扇の開口からときたま盛大な煙が出たりしているから。そんな怪しいムード満点のこの店,意外と人が入っていた。

tanuki_232.jpg

 で,何年も前の冬,雪の降りしきる日に同僚1名,友人1名を引っ張って,“大狸”に入った(昔から,入ってみたかったのだ)。早い時間だったがカウンターはほぼ一杯で,奥座敷に通された。何せウナギの寝床の店内で,カウンター以外は,4人用のこの小上がりだけ。このあとに本格飲み会を控えていたので,軽く偵察と相成った。同僚Aの注文,“ポテトの炭焼き”,店主(ぶっきらぼうに)“それ,時間かかるよっ!いいかいっ!”(作りたくないのか?),A;“いいですよ”。で出てきたのは燗酒を4合もやっつけたあとだったろうか。1時間はかかっていないと思うけど。その間の店主,Aのイモをほっぽらかしにしていたわけではなく,それはそれはこまめに,炭火にかけたイモをひっくり返していた。実に綿密にである。このイモが美味であったのは言うまでもない。燗酒は・・・初めは徳利が来たが,お代わりすると,ヤカンを小上がりの上がり框にドンと置いて,“はいよっ!”。お替わりは,“ヤカンそこにおいといてっ!”厨房(といえば格好いいが,まぁカウンターの中)には親爺一人,それであれだけの客を相手にしているのだから,かなり忙しかったことだろう。
 時間が来たので,1時間ちょっとくらいで店を出て,雪の降りしきる中を次の店に急いだことを思い出す。今でも,イモとヤカンの思い出話は盛り上がる。だが,この“大狸“もついに店をたたんでしまった(去年だったか・・・)。もっと行っとけばよかった。今は,”大狸“を失った建物の壁が何事もなかったかのように,アルミのドアをつけて,そこにある。

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